新旧織り交ぜた文化そのままに、多様な味が存在するエリア
歴史の面影を残しながらも、郊外の住宅地として発展してきた町。
旧松任市にあたるエリアは、古い文化と新しい顔が息づく場所だ。
広い平野部を抱え、米作りも盛ん。茶の湯に親しむ人も多い。
一方で市街化していくこのエリアには、
昔から愛され続けている懐かしい味もあれば、
新興勢力ともいえるレストランも台頭している。
そんなさまざまな味こそが、松任の「顔」といえるのかもしれない。
旧松任市にあたるエリアは、古い文化と新しい顔が息づく場所だ。
広い平野部を抱え、米作りも盛ん。茶の湯に親しむ人も多い。
一方で市街化していくこのエリアには、
昔から愛され続けている懐かしい味もあれば、
新興勢力ともいえるレストランも台頭している。
そんなさまざまな味こそが、松任の「顔」といえるのかもしれない。
◆高砂茶寮
造り酒屋の歴史もごちそう。逆張りの発想を貫いた酒蔵レストラン
最初のきっかけは「商店街に人を呼ぼう」ということだった。造り酒屋だから、お酒が飲める居酒屋に…そう考えがちなところを、女性をターゲットにしたレストランにした。「居酒屋に来るのは主に男性。男性が来るのは夜には商店街のほかのお店は閉まっている。女性ならお昼に来て、商店街をうろうろして何か買い物もするだろうし、何より女性はおいしい店を知ると、いろんな人に話したくなるんですよ」と。答えてくれたのは、この酒蔵、金谷酒造の女将であり、レストランの店長でもある女性だ。
女性が好きなお店は、長い時間おしゃべりできるお店。だから、昼も夜も客を回転させることはしない。メニューは月替わり全10品のコース1種類のみとした。回転数を稼ぎ、メニューのバリエーションで満足度を高める一般的な飲食店とは、正反対の発想だ。「女性は、月に何度も同じ店で外食したりしないですから。とくにうちは、3000円近い価格。せいぜい月1回です」その代わり、月1回の来店で満足してもらえるよう、料理はスタッフ総出で試食をし、来店客の反応に耳を研ぎ澄ます。「おいしいだけではなく、何か感動を」と構成はもちろん、器、盛り付けなどにも工夫をこらす。
その料理は、和のテイストを取り入れたフランス料理。地元商店街から仕入れた食材を中心に、珍しい野菜を取り入れてメリハリの利いたコースに仕立て上げる。口直しに出るグラニテとパン以外は一度たりとも同じメニューにしたことはない。飲み物は、日本酒と日本酒を使ったオリジナルカクテル。ビールは1種類のみ、焼酎やワインは置かない。このあたりは、造り酒屋のプライドか。その造り酒屋の蔵の中、100年を越す悠久の歴史を感じながらの食事に、今日も女性客が続々と訪れている。
≪お店のデータ≫
住所:白山市安田町3-2
電話:076-274-1177
営業時間:11:30~13:00(入店)、17:30~19:30(入店)、日曜日は~19:00(入店)
定休日:不定休
駐車場:あり
席数:22席のほか、個室あり
コース2985円(昼・夜共通)
◆旬味 にしで
食いしん坊の腕利き主人が作る、懐かしい味の特大コロッケ
「目指すのは、大人の居酒屋なんです」と話すご主人、西出さん。おいしい刺身が食べられる、ちょっと贅沢をしたいときに気を張らずに行ける…。そんな位置づけで着実にファンを増やしている店だ。
子どもの頃、寿司職人の叔父に憧れたというご主人。金沢の老舗料亭で修行をし、その後「いつかは自分の店を持ちたい」と、タイプの違う飲食店をいくつか渡り歩いて、この地に念願の店を開いた。たとえランチメニューであろうとも注文を受けてから包丁を入れる刺身のキレの良さ、腹ペコなときにガッツリ食べたい一品の、思わず箸が進むプロならではの味つけ。懐の広さを感じさせるメニュー構成は、経験がものを言っているに違いない。
その最たる一品が「自家製ビーフコロッケ」。じゃがいもとひき肉と玉ねぎを使った…といえば、よくあるコロッケを連想するが、まずはその大きさに驚かされる。「自分が食いしん坊なもので」といたずらっぽく笑うご主人。大中小とあるらしいが、大はなんと、1個350グラム。両手の平に一杯になるほどの大きさだ。見た目に圧倒されながらひと口食べると、クリーミーな舌触り。これはホワイトソースの仕業。さらに隠し味に醤油ベースのステーキソースを使う。日本人のDNAにじわじわと効いてくる味わいだ。しっとりした生地と衣のサクサク感のコントラストを出すために、注文を受けてから衣をつけて揚げる。一見豪快なようで、細かい心配りの利いた仕事ぶり。やんちゃだけどナイーブな、いい意味で「男の子っぽい」料理。メス化するイマドキな飲食業界に飽き足らなくなった、大人たちに支持されるのも納得である。
≪お店のデータ≫
住所:白山市田中町313-3
電話:076-274-5425
営業時間:11:30~13:30(L.O)、17:30~22:00(L.O)※日曜昼は予約のみ営業
定休日:水曜日
駐車場:あり
席数:カウンター9席、小あがり8席、2階座敷20名
ランチ1000円、コース8品4000円~、自家製ビーフコロッケ(大)700円・(中)600円・(小)500円、鯖1本を使った棒寿司も人気。
◆金城納豆
石川の大豆と白山水系の水、そして永年親しまれた味は、まさに「地納豆」
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石川県内のスーパーで、必ずといっていいほど見かける、金城納豆。創業は1945年。緑色のパッケージでおなじみの定番商品のほか、小さなパックのもの、経木や藁に包まれたこだわりの納豆…と、さまざまな商品が生み出され、現在は約30種類。そんななか、2007年に登場したのが、石川県のエンレイという大豆だけで作った納豆だ。その名も「石川県産大豆」。このとき同時に中粒の大豆を使った既存の3商品も、石川県産のものに切り替えた。
石川県内で多く作られているエンレイ種は、比較的粒が小さい。この大きさは、ちょうど納豆の「中粒」といわれるものに適しているのだという。「将来は、大粒や小粒のものも、県内産のものを使いたいのですが、まだ安定した収穫量を確保できないので…」といいながらも、JA石川とタイアップして数量限定ながらも小粒納豆を販売するなど、地産地消への取り組みは前向きだ。その根底にあるのは、地元メーカーであるという誇り。
「北海道の大豆を使えば収穫量も安定しているし、大粒や小粒も確保できる。でも、その土地、その土地の納豆があっていいんじゃないかと思うんですよ」という。「地酒」にそれぞれの味があるように、納豆にも「地納豆」があっていい。大豆だけではなく、白山水系の恵まれた水もある。明るい褐色の豆やまろやかな発酵を感じさせる独特の風味。金城納豆は、永年地元で愛され続けてきた石川の「地大豆」なのである。
≪本社データ≫
住所:白山市宮永町2844
電話:076-274-9898(代)
本社にあるショールーム「納豆酵房」では、納豆作り体験を実施(要予約)。
大人1000円、小人(小学生以下)500円。
◆桶和
120年の歴史を経て今も進化し続ける。たかがだんご、されどだんご
「きびだんご」といえば、岡山の名産品を思い出す人も多いだろう。白い小さな団子。そのイメージを抱いて桶和の店頭を見ると、驚くかもしれない。桶和のきびだんごは、つぶ餡に包まれている。中はキビの粉と砂糖を入れて練り上げた褐色の求肥。パッと見た感じは、こぶりのおはぎのよう。シュッと口どけのよい餡と、もっちりとそれでいてなめらかな求肥。甘め餡なのに、キビのほろ苦さのせいだろうか。次から次に食べたくなる誘惑にかられる、ちょっと危険な味だ。
桶和の創業は文政二年。約180年の歴史を持つ老舗である。きびだんごは、この店で120年以上にわたって作られ続けている。長い年月を経て愛され続けたこのだんごは、時代の流れに沿うように、味も少しずつ変化させているという。
キビと小豆は本来なじみがよくない。どうしても分離してしまうのだ。だから、きびだんご用の餡は特別に炊く。北海道の小豆をじっくりと炊き上げ、こげる直前に引き上げる。このタイミングが実に難しいのだが、この煮詰めた餡だからこそ、キビの入った求肥とよくなじむのだという。代々受け継がれているこの作り方を大切にしながらも、甘みを少しずつ変え、いい素材があると聞けば試し・・・。1個63円のだんごに家族総出で心血を注ぐ。夕方には売り切れることもあるし、支店も出店もない。だからこそ、守られる味があるのだ。
≪お店のデータ≫
住所:白山市安田町26-1
電話:076-275-0265
営業時間:8:30~18:30
定休日:水曜日(氷室の日は営業)、1月1日~3日
駐車場:あり
きびだんご1個63円、5個入り315円、10個入り630円
◆彩霞堂
砂糖を炊く。シンプルで奥深いこの仕事が作り出す上品な口どけ
「千歳くるみ」という。そのおめでたくも愛らしい名前がそのまま姿を物語る、つんと中高の小さな紅白の砂糖菓子。中には白山麓の鬼ぐるみが入っている。ひとつひとつ形が違うのは、くるみの形が違うから。そのため、機械ではなくすべて手で作られるのだという。
口に入れ、しばらくころがしていると、ごく薄く硬い幕を張ったような外側の砂糖がやわらかくなる。同時に内側のやわらかな砂糖の層がしゅっと舌の上で溶け出すのだ。そしてくるみにたどり着く。砂糖の甘みとくるみのほんのり苦い香ばしさ。くるみのカリッとした歯ざわりにまとわりつくような、せつなく、それでいて品のある砂糖の口どけ。
この口どけを作り出すのは、「砂糖を炊く」という仕事。ひとかかえもある大きな銅の鍋で、毎朝炊く。「使うのは、砂糖と水だけ。季節や湿度によって使う砂糖の種類や割合を変えたり、炊き方を変えたり。毎日やっていても、もっとおいしくしたいと思う。だから面白い」この道50余年の先代から出たのは、初々しいといっても過言でないような言葉だった。砂糖を炊くのは誰でもできる。しかし、この口どけになるように炊くのは、レシピでもタイミングでもなく、「勘と経験」。現社長も、10年以上先代について、やっと独り立ちできるようになったのだとか。一子相伝。なかなか聞かなくなった言葉の重みを感じさせる味である。
≪お店のデータ≫
住所:白山市石同町22
電話:076-275-0072
営業時間:8:30~20:00
定休日:元旦
駐車場:あり
めいてつエムザ、アピタ松任、まっとう車遊館、小松空港でも販売
千歳くるみ10個入り花こばこ845円、15個1300円





